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夜半に、ふと物音を聞きつけて。
 またか、と思うと同時、どうしたのだろうと、眉根を寄せる。
 一度目は、余り気にも留めていなかったけれど。 
 どうも最近、お店での松之助の表情が、暗い気がして。
 どうにも、気になってきて、佐助はそっと、布団から抜け出した。

「松之助さん?」

 そうっと、木戸を潜り抜けようとする背に呼びかければ、過剰なほどにびくりと、その背が跳ねる。
 
「あ、…佐助さん」

 驚いて取り落としたらしい、紙入れを拾い上げれば、それは随分と重い。
 
「こんな時間に、何処に行くんです」
「あ、…は、腹が減って…」

 言う、その視線は泳いでいて。
 佐助は一層、怪訝そうに眉根を寄せた。

「蕎麦を手繰るには、こいつは随分と多すぎやしませんか?」

 下手すぎる嘘に、柔い声音で苦笑すれば、困りきったように眉尻を下げて、見上げてくる眼と、視線が合った。
 どうにも、訳ありらしいと感じて。
 そっと、その手を引いて、近くの庭石に座らせる。

「一体何があったんです」

 問いかけても、松之助は俯くばかりで。
 何か困ったことになっているのは、確かなはずなのに。
 決して、自分から口を開こうとはせぬ、その頑なな姿勢に、己の主の姿が、重なる。

 
「全く…似なくてもいいところまで似ているのだから」
 
 困ったように呟けば、松之助がきょとんと、目を見開くから。
 苦笑いで、「頑固なところが、若だんなとそっくりだ」といえば、初めて、その顔に笑みが浮かんだ。
  
「最近の松之助さんは元気が無い。…若だんなも心配しますよ?」
「………。実は……」

 松之助は何度か逡巡する素振りを見せたけれど。
 大事な一太郎の名に、躊躇いがちに、口を開く。
 最初は、手持ちの金を渡した。
 弟は、それでは足りぬといった。これっぽっちではとても、足りぬと。
 店が焼け建て直し、借金が自分達を苦しめているのだと。
 その上、戸惑う松之助に、「なら長崎屋の旦那様に直接頼んでみるよ。…実の子の弟だもの。きっと良くして下さるに違いないよねぇ?」と、笑ったのだ。
 それだけは。長崎屋に迷惑を掛けることだけは、避けねばならないから。
 長崎屋に来てから今日までこつこつと貯めていた金子を渡そうと。
 誰にも気づかれぬよう、夜半、抜け出そうとしていたのだ。

「そうでしたか…。弟さんを思いやるのはお優しいことですがね。…それが弟さんのためにならないのは、松之助さんだって分かるでしょう?」

 柔く、諭すように言えば、こくりと一つ、首が縦に揺れる。
 俯いた顔は、今にも泣き出してしまいそうで。
 佐助はそっと、その手を擦ってやりながら。
 松之助からの、言葉を待つ。

「分かって…いました。…けど、自分だけ助かって…あたしは、此処でこんなにも良くして貰っているのに…林太郎のことを…弟のことを、気にも掛けてやれなかった…」

 だから、負い目を感じて。
 つい、金を渡してしまったと、松之助は言う。
 弟と言っても、殆どかかわりの無い縁の薄い存在のはずなのに。
 なんとも松之助らしいと、内心で苦笑しながら。
 これからどうするか問えば、とりあえず今日は、林太郎が待っているから行くと言う。

 金子は渡さず、分かってくれるまで話をすると。
 それが良いと、佐助が笑った時。

「佐助…?兄さんもいるの?」

 不意に、響いた声に、びくり、松之助の肩が跳ねた。
 最も、知られたくない人に声を掛けられて、きゅっと、膝の上で握り締めた手が、緊張に強張る。
 
「若だんな。どうしたんですこんな刻限に」
「どうしたって…私は厠に行くところだよ。…兄さん?出かけるの?」
「あ…その…」

 怪訝そうに小首を傾げる一太郎に見上げられて。
 松之助の視線が、揺れる。
 
「どうしたの。何があったの」

 その、瞳にいつもと違う気配を察したのか。
 松之助を覗きこむ目は、逃げることを許さなくて。
 困りきったように、眉尻を下げる松之助に見上げられて、佐助は小さく、苦笑を漏らす。

「松之助さん、観念するしかないんじゃあないですか?」
「そんな…」
「…どういうこと?」

 小首を傾げる一太郎に、戸惑う松之助を他所に、佐助が全てを話してしまう。
 そうして、全てを聞いた一太郎は、己も行くと言い出した。

「だ、駄目です。夜も遅いし、お体に触ります」 
「そうですよ若だんな。ちゃんと寝て無くては駄目です熱がでますよ寝込みますよ」

 佐助も窘める様な視線を投げて、寝間へ戻るよう、その薄い肩に手を掛ける。
 けれど、一太郎は頑として動こうとはしない。
 パシリ、佐助の手を払い除けると、強い眼で松之助を見上げて、言った。

「兄さん一人じゃあ心配だもの。…どうしても私を置いていくというのなら、私は兄さんが心配で心配で、きっと朝には熱を出しているだろうさ」

 その声音は、どこか怒っている風で。
 決して、譲る気配を見せない挙句、熱を出すといわれては、頼りの佐助も困り顔で空を睨みつけるしかない。   

「仕方ない…。帰ったらすぐに寝るんですよ?」
「佐助さんっ?」

 何を言い出すのだと、目を見開く松之助に、佐助が、困ったように笑う。

「仕方ないでしょう。あたしも付いていきます」

 己一人で、誰にも迷惑を掛けぬように、事を片付けるつもりだったのに。
 随分と大掛かりな話になってしまったと、松之助は一人、戸惑うように眉根を寄せた。




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「松之助さん、いつもご苦労様」

 何気なく、耳に入ってきた名前に、ふと、足を止める。
 視線をやれば、荷運びか何かの帰りだろうか。
 若い手代を、店の番頭らしき男が、店先まで見送りに来ていたところだった。

「いえ…こちらこそ、いつもありがとうございます」

 控えめに笑いながら、しっかりと返すその横顔に、目を凝らす。
 手代は、随分と上等な着物を着ていた。
 大店に、勤めているのは一目で知れる。
 話でしか知らぬ兄の、生みの父親が営んでいる店のような、大店の手代に違いない。

 
「いえいえ。長崎屋さんには本当に、いつもお世話になって…」

 番頭が、何気なく口にした屋号に、目を見開く。
 どくり、血がざわつくような心地がして。
 思い浮かぶのは、一つの予感。
 そう言えば、あの火事で兄の奉公先も燃えてしまったのだ。
 兄が生まれた時に、既に縁が切れていたとはいえ。
 生みの親を頼っていたって、不思議は無い。  

「松之助、…兄ちゃん?」
 
 番頭に暇を告げて、歩き出したその背に、恐る恐る、呼びかける。
 振り返った顔は、怪訝そうな色を浮かべていたけれど。
 それでも、本郷の、今は焼けてしまった己の生家の屋号を告げると、その眼は驚いた様に見開かれた。

「林太郎…お前…無事だったのかい」
「ああ。…兄ちゃんも、元気そうだね」

 零れるように、己の名をつぶやく兄に、林太郎は、ぎこちない笑みを向ける。

「今は…長崎屋に?」
「え、…?ああ、うん。…廻船問屋の方で、手代を…」

 戸惑うように、自分を見つめる兄の身なりは、自分よりもずっと立派なものだった。

 家が焼け、店が焼け。
 一時は明日をも知れぬ身の上になり、ようやっと、店を建て直しても、今度はそこに、借金と言う重荷が覆いかぶさってきた。
 大した蓄えも無い店を立て直せば、借金が嵩むのは当然だ。
 林太郎の、日々の暮らしは、決して楽なものではない。
 人より随分荒れた手が、何よりそれを、あらわしていた。

「俺達のこと、気に掛けようとは思わなかったの」
「え?」

 小さく、呟いた声は、町の雑踏に紛れて、松之助には届かない。
 じわり、じわり、身のうちを底意地の悪い感情が焦がす。
 ぎりと、荒れた手を握り締めて。
 顔を上げて、浮かべるのは、意地の悪い笑み。
 
「俺たち、火事で家が焼けたでしょう?」
「ああ、うん。…大変だったろう」

 眉根を寄せて、弟を見つめる松之助は、心底心配していたけれど。
 歪んだ心持になってしまった林太郎には、ひどくよそよそしく、まるで他人事扱いのように、聞こえた。
 それは一層、身のうちの黒い感情を増幅さて。
 知っていて、助けの手を伸ばしてはくれなかったのかと、苛立つ。

「それでね。今、暮らし向きに酷く困っているんだよ」

 眉尻を下げて。
 悲壮な声音で喋る自分を、内心、大した役者だと、せせら笑う。
 
「兄ちゃん、長崎屋に勤めてるなら、随分貰っているんだろう?」

 覗きこんだ兄の眼が、揺れる。
 きっと、実の父に泣き付いて、良い待遇を受けているに違いないと、松之助のことを、何も知らない林太郎は、思い込む。
 こんなにも、こんなにも、己は辛い思いをしているのに。
 荒れて、ひび割れた手が、痛んだ。

「少しでいいんだ。……金子、都合しておくれよ」

 うっすらと笑みを浮かべて。
 覗きこんだ松之助の顔は、強張っていたけれど。
 その首を、横に振ることは、しなかった。







しました!!!
頂いていたリクもやっと消化できました~!!

相変わらず自己満色が強くて申し訳ない(´・ω・`)


仁屏のは頂いたリクのボツネタとか内緒www


今から一松←弟あぷる!!!
しゃばけキャラはみんなお行儀良く寝てそうですよね^^


犬吉さんは寝相が大変悪いらしいですwww
いや、コレまでも度々「最悪」と苦情が寄せられてたんですがねwww

「そりゃシングルに二人寝てたらそうなるって。あたしも蹴られたしよ」

とか思って気にも留めてなかったんですが(最低)、隣室者から

「犬吉ちゃん夜中すごい壁蹴ってるね(・∀・)」

と言われて自覚しましたすみません犬吉は寝相悪いですwww

夜中に壁から音がする……!!!

と隣室者はホラー現象だと思ってマジビビってたらしいwww
すみません犯人はあたしですwww
まぁ偶々彼女が夜中にトイレ行くので目が覚めたときに発覚したのであって、そんな寝てる他人を叩き起こす程蹴ったくってる訳じゃないよ!!(笑)



一松←弟書いてしもうた\(^O^)/

プロローグ的な部分\(^O^)/


弟とかwwwwww
完全に捏造キャラですよね原作には弟としか出てないんだもの\(^O^)/

いやあ我ながら素晴らしいマイ設定脳だなwww


弟流行らないかな弟。

うちの子お貸ししますだよマジで(いらね)


明日多分自宅に帰るので、あぷれたら此処にでもひっそりあぷりますぅぅぅ。

弟良いよ弟^p^
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