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「ようシゲ。大きくなったなぁ」

知らん声に振り返ったけど、杖片手に立つその人が、一瞬誰か分からんかった。
昔は杖なんかついてなかった。けど、サングラス越しの眼差しは凄みを増とった。

思わず、立ち竦むくらい。

「本当にサッカー選手になりやがったな」

薄く笑う声に、全身が総毛立つ。
この人が俺のことを覚えとること自体、信じられんかった。

「後ろ姿が彼奴にそっくりだぞ」

アイツ。
この人と俺の共通の知り合いなんか一人しかおらへん。
ド派な金髪にピアス。
そう言えば俺、にいやんの歳越してしもたなぁ。

「アイツも喜んでるだろうよ。…まぁ精々おきばりやす」

へったくそな京都弁でそれだけ言うと、あの人は杖をつきながら踵を返した。
何がしたかったんか、全く持ってわからへんかったけど。
あの人はそれきり、俺の前に現れる事はなかった。





インターホンも鳴らさず、いきなり鍵を開けて入ってきたモンやから、最初は死ぬほどびっくりした。

「にいやんは出てますけど」

一応麦茶なんぞを出しながら言うと、あの人は馬鹿にするみたいに薄く笑った。
笑うと凄みが増すなんてあの人ぐらいなもんやと思う。

「今日は家賃を貰いに来たんだよ」

ノンフレームの眼鏡越しにのぞき込まれて一瞬、息を呑む。

「あの…やからにいやんは…」
「アイツは俺の舎弟。だから俺がこの部屋の面倒を見てる。アイツは代わりに俺や組の為に働く。わかるな?」
「…はい…」

薄い笑みを浮かべながら。
言い含めるみたいに喋るあの人に、俺は頷くしかない。

「この部屋に住むならお前も、例外じゃない」
「………」
「俺もアイツもお前の事は気に入ってる。だから、組のために働けとは言わねぇよ」

薄い笑み。
顎にかかる指になる程だからにいやんは出て行く時にあんなにも挙動不審やったんかと、ぼんやりと思った。
今思えば俺の見てくれは、あの人に拾われた頃のにいやんに似てたんちゃうかな。

「安心しろよ。ガキに突っ込むほどキチクじゃねぇから」

じゃあガキにしゃぶらせるんはキチクやないんかいって思ったけど、 言わんかった。
一応あの人はそれ以上を求めることはなかったし、ホンマに組関係のヤバい仕事には俺を関わらせたりはせんかった。

あの人が帰った後。
帰ってきたにいやんは、俺と絶対眼ぇ合わさへんかったけど、無駄に優しかった。
ホンマに不器用で悪いオトナになりきれへんお人やったんやなぁって思う。
やから不思議と、あの人に、自分の身代わりみたいに俺を売り飛ばしたにいやんに、腹が立つことはなかった。

「お前サッカー選手になるんやろ?」

にいやんはある日真剣な顔でそんなことを言いだした。
確かにサッカーは好きやったけどプロになるとかそこまで考えてへんかった。
第一、そんなんしんどい。

「せやったら、学校とかも考えななぁ」

にいやんはよく一人勝手に考え込んでた。
俺は正直どうでも良かったけど、でも、俺のことで真剣に考え込んでくれるんが、くすぐったくて嬉しかった。

「今度、俺が昔飛び出した寺、連れてったるわ」

サッカー選手がヤクザとつるんどったアカン。とか言い出して。
俺はにいやんの部屋を出て行かなアカンのが嫌で、曖昧な返事で濁した。


にいやんの嘘吐き。
連れてってくれる言うたクセに。
結局、俺一人で寺訪ねたやんけ。




――――――――

シゲが寺へ行くのにこんな経緯があったら萌える(無いから


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