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時々R‐18w
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「――-っ」
強い、眩暈を感じて。
思わず、膝を着く。
膝の下で、柔らかな青草が、潰れる。
御坊は存分に、妖気を分けてはくれたけど。
連日連夜の修行で、思いのほか、自分は妖気をすり減らしていたらしい。
「当たり前…か…」
思わず、自嘲的な笑みが、漏れる。
万治郎が心配するとおり、碌に眠らず、食べず。
無茶な修行に打ち込んで。
少しでも多くの事が知り得たくて。
己よりも歳嵩の妖にばかり、探りを入れてきたのだ。
身体を重ねるのが手っ取り早いと、己から誘いをかけて。
交わるのはいいが、誰も彼もが、御坊の様に、気前良く、情報も妖気も、分けてくれるわけではない。
逆に、老獪な手口で、翻弄され、いつの間にか己の妖気を取られていることも、あった。
それでも。
闇雲に修行に打ち込んでいる間は。
誰ぞと行為に耽っている間は。
怒りを、哀しみを、忘れることができた。
「父様…」
ふらり、近づいた泉の畔。
水面を覗き込めば、月の光の中、黄金色の瞳が、映りこむ。
父親譲りの、金睛。
思い出すのは、昏い眼窩。
必ずや、取り返して見せると、きつくきつく、唇を噛む。
父さえ、生きていたら。
母も死なずに済んだのだ。
握り込んだ手指が、掌に爪を立てる。
ふと、背後に気配を感じて、振り返る。
「………」
じっと、こちらを見つめる、琥珀色の瞳と、目が合った。
白銀の髪が、月の光に、洗われ、流れる。
同じ、大陸の出だという。
皮衣が拾ってきた、大妖、白沢。
「此れは、珍しいですね。貴方が此方に帰ってくるなど」
その眼はいつも、皮衣に向いていて。
常に傍に在り、守っていると、聞く。
他の誰とも、関わろうとしないから。
妖狐たちは、何処か遠巻きに、畏怖の眼差しで、この妖を見つめていたけれど。
先に一度、怪我をした仔狐を観てもらって以来、守狐は白沢を、何となく気に入っていた。
偶に、妖の世に帰ってきたと聞けば、用もないのに訪ねて、長居をしても、大して嫌がる°素振りも見せぬから。
白沢も、守狐のことは、特に嫌ってはいないのだろう。
「顔色が悪いね」
艶のある、良く通る声で言われ、にやり、守狐は口角を吊り上げる。
そう言えば、此処は白沢の廟の近くだ。
「白沢殿は、今宵は随分とお暇なようだ」
その言葉に、白沢の形の良い眉が、ひょいと、上げられる。
ついと、一足飛びに、近づいて。
ふうわり、その目の前に、立つ。
「お相手、願えませんか?」
にいこりと、人好きのする笑みで、白沢の琥珀色の眼を、覗き込む。
一瞬、訝しげに眉根を寄せたけれど。
「外でする趣味は無いよ」
結局、何も聞かず、それだけ言って。
くるり、踵を返すその声音に、拒絶の色は無い。
守狐は誰とも無く、一人、笑みを零して。
風に流れる白銀の後を、追った。
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