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「――-っ」

 強い、眩暈を感じて。
 思わず、膝を着く。
 膝の下で、柔らかな青草が、潰れる。
 御坊は存分に、妖気を分けてはくれたけど。
 連日連夜の修行で、思いのほか、自分は妖気をすり減らしていたらしい。
 
「当たり前…か…」

 思わず、自嘲的な笑みが、漏れる。
 万治郎が心配するとおり、碌に眠らず、食べず。
 無茶な修行に打ち込んで。
 少しでも多くの事が知り得たくて。
 己よりも歳嵩の妖にばかり、探りを入れてきたのだ。
 身体を重ねるのが手っ取り早いと、己から誘いをかけて。
 交わるのはいいが、誰も彼もが、御坊の様に、気前良く、情報も妖気も、分けてくれるわけではない。
 逆に、老獪な手口で、翻弄され、いつの間にか己の妖気を取られていることも、あった。
 それでも。
 闇雲に修行に打ち込んでいる間は。
 誰ぞと行為に耽っている間は。
 怒りを、哀しみを、忘れることができた。

「父様…」

 ふらり、近づいた泉の畔。
 水面を覗き込めば、月の光の中、黄金色の瞳が、映りこむ。
 父親譲りの、金睛。
 思い出すのは、昏い眼窩。
 必ずや、取り返して見せると、きつくきつく、唇を噛む。
 父さえ、生きていたら。
 母も死なずに済んだのだ。
 握り込んだ手指が、掌に爪を立てる。
 ふと、背後に気配を感じて、振り返る。

「………」

 じっと、こちらを見つめる、琥珀色の瞳と、目が合った。
 白銀の髪が、月の光に、洗われ、流れる。
 同じ、大陸の出だという。
 皮衣が拾ってきた、大妖、白沢。

「此れは、珍しいですね。貴方が此方に帰ってくるなど」

 その眼はいつも、皮衣に向いていて。
 常に傍に在り、守っていると、聞く。
 他の誰とも、関わろうとしないから。
 妖狐たちは、何処か遠巻きに、畏怖の眼差しで、この妖を見つめていたけれど。
 先に一度、怪我をした仔狐を観てもらって以来、守狐は白沢を、何となく気に入っていた。
 偶に、妖の世に帰ってきたと聞けば、用もないのに訪ねて、長居をしても、大して嫌がる°素振りも見せぬから。
 白沢も、守狐のことは、特に嫌ってはいないのだろう。

「顔色が悪いね」

 艶のある、良く通る声で言われ、にやり、守狐は口角を吊り上げる。
 そう言えば、此処は白沢の廟の近くだ。

「白沢殿は、今宵は随分とお暇なようだ」

 その言葉に、白沢の形の良い眉が、ひょいと、上げられる。
 ついと、一足飛びに、近づいて。
 ふうわり、その目の前に、立つ。

「お相手、願えませんか?」

 にいこりと、人好きのする笑みで、白沢の琥珀色の眼を、覗き込む。
 一瞬、訝しげに眉根を寄せたけれど。
 
「外でする趣味は無いよ」

 結局、何も聞かず、それだけ言って。
 くるり、踵を返すその声音に、拒絶の色は無い。
 守狐は誰とも無く、一人、笑みを零して。
 風に流れる白銀の後を、追った。





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「へぇ?お前、比干を探っているのか」

 にやりと、笑みを浮かべる御坊に、守狐は艶然と、その唇に笑みを乗せる。

「どんな奴か気なりましてね。…私らがこの国に渡ってくる前から、いるんでしょう?」


 齢を重ねた、この国の妖なら、比干のことを良く知っているかも知れぬ。
 そう思い、かまをかけたら、御坊に化けたその妖は遠くを見つめるように、視線を投げた。

「そうさなぁ…。真逆あいつが、ああなるとは、誰も思わなんだな」

 『ああなった』出来事でも、思い出したのか。
 御坊の眉根が、少し苦しげに寄せられる。

「始めは、風変わりな人間だったのだ。…自分はこの世を収めて見せると。ほれ、良く頭のおかしいのがいるだろう?あの手間と、皆思っていた」

 誰もが比干を馬鹿にした。
 蔑んだ。

「それは一層、奴を歪ませてしまった…」

 そうして、その歪みはどんどん大きくなった。
 人も妖も、手が付けられぬほど。

「比干は…今何処に?」
「奴は今も、この辺りに潜んでいるよ。奴は人の多いところに、現れる。それだけ奴が付け入る隙が、あるからの」

 つまり、この京の都に、潜んでいるのだ。
 近い。と、守狐は思う。

「どんな奴なんで?」
「化けるのさ、奴は。…お前さん方みたいに、いくつも姿を持っておる」

 それでも、何か特徴があるだろうと言えば、御坊は考え込むように、俯いてしまう。

 その眼が、ちらり、上目越しに意味ありげな視線を寄越す。
 守狐はひょいと、片眉を引き上げた。

「もう少しで、思い出せそうなんだがのう…」
 
 老獪なやり口に、思わず苦笑を漏らしながら。
 守狐はついと、その袈裟の胸元を、細く白い指で、なぞる。

「何もただで教えてくれとは、言ってませんよ」
 
 口角を吊り上げ、上目越し、笑みを返す。
 さらり、切り揃えた真白い髪が、流れる。
 守狐の細い腕が、御坊の首に、絡んだ。

「魂魄まで喰われそうな笑みだの」

 守狐の首筋に唇を寄せながら。
 くつくつと、喉の奥で忍び笑いを漏らす御坊に、守狐は苦笑する。
 自分とこの妖とでは、恐らく千年は有に離れている。
 相手の力量が読めぬほど、守狐は馬鹿ではなかった。

「真逆。誰がそのような…」
「狐の言うことを信じるほど、わしも抜けてはおらんよ」

 そう、言いながら。
 それでも、守狐のことを気に入ってくれたらしく、存分に妖気を分けてくれた。
 己の限界を超えるほどに、修行に打ち込んでいるから。
 すり減らした妖気は、誰ぞから貰うのが、一番、手っ取り早い。
 霊穴で暢気に寝ていられるほどの余裕は、守狐には、無い。

「奴はあまりに多くの、妖を喰いすぎた。近づけばすぐに、それと分かるほどの臭いを放っておるよ」

 荒れ寺の境内。
 板の間に寝転がりながら、御坊は枕語りに教えてくれた。
 堕ちた妖が放つ、特有の悪臭。
 比干のそれは、草木を枯らすほどだという。

「それを隠すため、奴は長い間修行を積んだ、道骨のある狐の毛皮を纏っているという」


 その言葉に、守狐の眼が、見開かれた。
 先程までの快楽の余韻に浸る、御坊は気付かないけれど。
 その黄金色の双眸が、ゆらり、揺れる。
 ぎりと、伸びた爪が、古い板間を掻いた。

「真白い、それは立派な毛皮だそうだ」

 守狐の真白い髪を梳きながら。
 何も知らぬ御坊は「お前さん方の知り合いかも知れぬな」等と、同情的な声音で言う。

 
「また、何か分かったら、教えて下さいね」

 名残惜しげに絡む手を振り払って。
 艶然と笑むと、守狐は手早く着物を調える。

「守狐」
「何か?」
「奴は欲を持った奴に近づく。利用し、喰らう為に。…承香殿の女御殿が、身篭ったらしいな」

 思わず、振り返る。
 老獪な御坊は、まだ着物すら纏わず、笑っていた。

「ありがとうございます」

 丁寧に、頭を下げて。
 守狐はゆらり、その姿を影に溶け込ませた。






フツーに封神ネタだったわ。
安能氏意訳多いから多分違うだろうけど(笑)

妖精:妖術獲得

妖げつ:5百年修行して更に天精地霊を蓄え人間に化ける事が出来るようになる

妖怪:更に5百年(ryずーっと人間。仙人クラス。



あんま参考にならんな(´_ゝ`)
大妖は妖怪、小妖は妖精ってとこかな?(笑)

あにさんも一応仙人クラスなわけか。
仙人は弟子がいて、道師がその弟子なんだよね確か(うろ覚え)
守さんは好きで妖げつ止まりってとこかな。

守狐「人のナリは肩が凝るんでね」





>みーこさま

お久しぶりです!!
こんばんは><

いやいやそんな!
お忙しいでしょうからゆっくりで構いません!
楽しみに待っております^^

ありがとうございます><

うちの守屏はあんな感じです(笑)
ツッコミ不在の夫婦に守さんが振り回された結果、屏風と結ばれたのですwww
よく考えたら皮衣さまが姑的位置にくるので、屏風ちゃん大変!(笑)
フォローに走る守さんはもっと大変!(笑)

ひいぃ……!!
ありがとうございますっっ><
守さんはアホな屏風が大事で大事で仕方ないので、必然的にそんな話ばかりになってしまいます(笑)
でも読み返しても良いことないと思います!(笑)


お気遣いありがとうございます^^
この休み期間は色々マニアックな方向に走りたいと思います(笑)


やんやんマチコの呟きが気になって流行のツィッター始めました(笑)


しかし使い方がよくわからんぬ(´・ω・`)

y_kenkichiでいるはずです多分。




守さん物語の下書きが完結したよー^^


守さんの中でのあにさんの位置を最後で明確にできた。と思う(笑)



守さんの中のみんなの位置


皮衣さま:困った師

鈴君:困った人その2(笑)

おたえ:可愛い。大事な子

屏風:愛しい人。甘やかしたい。安らぐ(馬鹿だから)

あにさん:大好き。素を出せる人

牛:揶揄の対象(笑)



みたいな感じ!
噂では海量(ハイリャン:海程の量を呑み干す)の守狐と万治郎ですが、守さんは唯一あにさん前では酔いつぶれるらしい。

酔ったらあにさんに対しての扱いが常5割増で酷くなるらしいよ!!(鬼)


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