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時々R‐18w
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一瞬、我が目を疑った。
黄金色の瞳が、闇に浮かんで。
誰より美しい毛並みが、月の光に洗われる。
兄様が帰ってきた。一瞬、そう、思うほど。
崩れ落ちるように、座り込んだ皮衣の頬を、涙が一つ、伝った。
「皮衣様」
ひざまづく、その薄い肩にそっと、震える手で、触れる。
まだ骨身がちで、幼い肩を、包むのは真白い毛皮。
誰より美しい、その毛並みが。
やっと、帰るべき場所に、帰ってきたのだ。
「立派に、…なりましたね…」
視界が、滲む。
泣き出してしまった皮衣の肩を、守狐が、苦笑交じりに、擦った。
「どうして貴方が泣くのです。…それより」
言いながら、目の前に差し出されたのは、白金色の毛皮に包まり、眠る仔狐。
同じ妖狐の仔であることは、間違いなかった。
「比干に、親を殺された仔です」
守狐の言葉に、皮衣は小さく、息を呑む。
そっと、仔狐を抱きあげれば、余りに軽い。
こんなにも幼い仔を遺して。
無残に散った、親狐を思うと、忍びなかった。
「可哀想に…」
白金色の毛並みを持つ妖狐たちのことは、聞いたことが無かったから。
独り、襲われていたところを見ても、この仔が一族の最後の生き残りなのだろう。
たった一人で、生きていくには、あまりに幼い。
「うちで、面倒見てやりましょう」
皮衣の言葉に、守狐が笑みを浮かべる。
安堵したような、その表情に。
皮衣からも、笑みが零れた。
「かか…さま…」
それが、意識を揺らしたのか。
ぼんやりと、眼をあけた仔狐が、皮衣を見上げる。
呟かれた言葉には、応えずに。
もう一度、両親の毛皮に、包みなおしてやって、皮衣はそっと、仔狐の目を、覆う。
「眠りなさい。…もう、安心して、眠りなさい」
歌うような、酷くやさしい、その声に導かれるように。
再び寝息を立て始めた仔狐の、そのあどけない姿に。
守狐からも、笑みが零れる。
「皆には私から言うわ。…お前はもう、洞府に下がって休みなさい。…万治郎が心配しています」
苦笑混じりに言えば、守狐も、眉を吊り上げる万治郎の姿を想像したのか、苦く笑う。
実は、先刻、溢れる強大な妖気に気付いた万治郎が、人の世に降りてきて。
どういうことかと、問い詰められたのだ。
隠し切ることが出来ずに。
全てを話してしまえば、万治郎は酷く、怒っていた。
『あいつはまだ子供です。そんな惨いこと、子供にさせることじゃあない』
言われた言葉が、胸に刺さる。
けれど、この役目は、守狐にしか、出来なかったのだ。
強大な邪気を払うには、火眼と金睛、両方の力を持つ、守狐にしか、出来なかったのだ。
そう告げれば、万治郎は苦しげに眉根を寄せていたけれど。
踵を返したその背に、声を掛ければ、
『弟が大役を果たして還ってくるのだから、兄が待っていてやらなくてはなりません』
と、強い口調で言い切って、帰って行った。
支えてやってくれと、言ったけれど。
その通りになってくれた事が、皮衣はひどく、嬉しい。
「では、失礼します」
「ああ、すまなかったね…。…本当にありがとう」
その背に、重い物を背負わせてしまって。
恨みを、断ち切ってくれて。
すまなかった。ありがとう。
皮衣の思いを察したように。
守狐は困った様に笑って、その姿を、影に消した。
――――――
あにさんは心配症www
ラスト1話です><
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