日記 守狐誕生秘話w8 忍者ブログ
ネタだったり日記だったり。。 レスやお知らせもココ。 時々R‐18w
HOME • Admin • Write • Comment
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



 最近、守狐は傍目にも鬼気迫るものを感じるほどに、修行に打ち込でいる。
 寝食を忘れて、打ち込む姿に。
 ただでさえ、線の細い身体が、日ごと夜毎に、やつれていく気がして。
 万治郎は胸に不安を、抱かずにはいられなかった。

「師弟、お前何があったのだ。…修行に打ち込むのはいいが、きちんと寝てるのか。飯は…」
「さあ?」
 
 皆まで、言い終わる前に。
 艶然と、笑う唇に、言葉を遮られる。
 やつれた頬が、一層、危うい色香を放っている気がして。
 万治郎は思わず、押し黙る。 
 けれど、その横顔に、確かに自嘲的な色が滲んでいるのにも、気付いていて。

―子供がする顔じゃないだろう…―

 以前から、どこか艶めいた雰囲気を持ち合わせていたけれど。
 それでも、自分に向けられるのはまだ少年らしさが残る、無邪気なものだったのに。
 態と、色香を孕んだ笑みで誤魔化して。 
 確かに、笑みを向けているのに、決して、自分と視線を合わそうとはしない。
 最近、いつも何か物思いにふけっていて。
 声を掛けても、返事はおろか、気付いていないことさえ多々あった。
 珍しく人界に下りたと思ったら、変化の解けた姿で、皮衣に抱えられ、運び込まれてきて。
 それから、二人、霊穴の間に篭り、出てきたと思ったら、もう、この状態だった。
 一体何があったのか。
 師に問い詰めても、曖昧に笑うだけで、答え様とはしてくれなくて。
 ただ、「あの仔の傍に、ついてやっておくれ」と、言われただけだった。

「師弟…?」

 かたり、物音を聞いた気がして。 
 夜半、起き出してみれば、守狐の寝床は、もぬけの殻。
 またかと、内心、溜息を吐く。
 此処のところいつも、万治郎が寝付いたのを見計らったように、守狐はどこぞへ出かけていく。
 気配を探っても、近くには感じないから。
 皮衣のいる、人界にでも降りているのだろうか。
 もう、万治郎の後をついてきた、幼子では無いのだから。
 もしかしたら、馴染みの女のところにでも、通っているのかも知れぬ。 
 だから、心配することは、無いのかも知れぬ。
 それでも。

「心配するだろう。…私が弟と思うのは、お前だけなのだぞ…」

 ぽつり、呟いた声は、誰に受け止められることなく、薄暗い洞府の廊下に、溶け消えた。

PR
この記事へのコメント
Name
Title
Mail
URL
Color
Comment
Emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Pass   コメント編集用パスワード
 管理人のみ閲覧
Copyright ©  -- 日記 --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Material by もずねこ
忍者ブログ  / Powered by [PR]