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時々R‐18w
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待ち合わせ場所の、社の境内に向かう。
「林太郎…?」
小さく、呼びかければ、闇に沈んだ本殿の影から、現れる人影。
そこに、松之助以外の人間を見留めて。驚いたように、目を見開いた。
「な、何だい。…随分味方をつけてきたみたいじゃないか」
その、表情にはありありと狼狽の色が浮かんでいたけれど。
虚勢を張った口元には、揶揄するような笑みが浮かぶ。
「そんなつもりじゃあ…」
「じゃあ、金子を都合してきてくれたんだろうね?」
戸惑う松之助の言葉を遮って、問いかける林太郎の声はきつい。
松之助は一度、息を吐くと。
ゆっくりと、その首を横に振った。
「金子は、もう渡せないよ。…林太郎、それが自分のためにならないのは、お前も分かるだろう?」
銭金は、自分の力で稼ぎ出すものだ。
人に頼って得たそれは、きっと身にならない。
跡取りとして商いに携わってきた林太郎ならわかるだろうと、松之助は諭すような視線を投げかける。
けれど、それは一層、林太郎の苛立ちを煽り立てて。
まるで、聞き分けの無い駄々子のように。
何度も、その首を左右に打ち振った。
「何だい何だい!いきなり兄貴面しないどくれよ!…今まで、俺達のこと気にも掛けなかったくせにっ!」
その言葉に、松之助の瞳が、揺らぐ。
ずきり、林太郎の言葉が、胸を刺した。
「気にも掛けなかったのはどっちさ」
不意に、響いた声に、林太郎が目を見開く。
「若だんな…」
松之助が戸惑うように振り返った先、珍しく、怒りが滲む目で、一太郎が林太郎を、真っ直ぐに睨みつけていた。
「な、何だよ…」
「お前さんは、幼い頃に奉公に出された兄さんを、気に掛けたことがあったの?…あの火事で東屋が焼けたとき、兄さんを探そうとしたことはあったの?…兄さんがどんな思いで長崎屋を訪ねてきたか、知っているの…?」
今度は林太郎の瞳が、揺らぐ。
一太郎の言葉に、松之助に視線をやれば、ふと、逸らされてしまう。
その横顔に、今までの、松之助の寂しい身の上を、垣間見た気がして。
寸の間、言葉も無く、立ち尽くす。
「兄さんはね、決して長崎屋に迷惑がかからないようにって、絶対に、長崎屋との関係を口にするとは無いんだよ」
「若だんな…」
松之助が、戸惑うように、一太郎を見つめる。
けれど、一太郎の視線は、射抜くように林太郎を見つめたままだ。
「兄さんは決して自分の生まれに甘えたりなんかしてないよ」
きっと、実の父に泣き付いて、良い待遇を受けているに違いないと、思い込んでいた己を見透かされたようで。
林太郎の頬に、さっと、朱が走る。
「若だんな、もう良いです。…確かに、林太郎の言うとおり、あたしは義父たちを気に掛けることをしなかった…」
「それは兄さんが自分が生きるのに手一杯だったからでしょうっ?」
力なく笑う松之助に、一太郎が焦れたように叫ぶ。
松之助も、自分と同じ、否、家族との縁が薄かった分、自分よりもずっと、心細い思いをしていたのだと、林太郎は初めて、気付かされる。
「ごめんよ、林太郎」
深々と、頭を下げられて。
林太郎は大きく、目を見開いた。
慌てたように、松之助の肩に手を掛ける。
「や、やめとくれよ。…ごめん。謝らなくちゃいけないのは、俺のほうだ…」
零れるように呟かれた言葉に、ふと、松之助の顔に、笑みが乗る。
互いに、顔を見合わせて。
零すのは、照れたような、笑い顔。
「これ、返すよ」
そう言って、差し出された懐紙に包まれたのは、先に松之助が差し出した金子。
そっくりそのまま、帰ってきたのに、松之助は戸惑うように、林太郎を見つめた。
「なんだか兄ちゃん一人、幸せになってるように見えてさ。腹が立って、こんなことしちまったけど…どうにも使えなくて、置いたままになってたんだ」
気まずそうに笑いながら。
見あげてくる林太郎の眼は、真っ直ぐで。
性根まで歪んでしまったわけではないのが、分かる。
「そっか。…じゃあ、受け取っておくよ」
頷き、松之助の懐に収められたそれに、林太郎も笑って、頷いた。
「じゃあ、色々ごめん」
苦く、笑って。
踵を返す背を、松之助が、呼び止める。
「林太郎」
「何?」
振り返った顔に、向けられたのは、ひどく優しい、微笑い顔。
「困ったことがあれば、いつでも訪ねてくると良い。…兄弟、なんだから」
躊躇いがちに告げられた言葉に、林太郎の目が、大きく見開かれて。
一拍後に、浮かべたのは、泣き出しそうな、笑い顔。
「うん!…ありがとう、松之助兄ちゃん」
力強く、頷いて。
掛け去っていく弟の後姿を、松之助は見えなくなるまで、見送っていた。
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夜半に、ふと物音を聞きつけて。
またか、と思うと同時、どうしたのだろうと、眉根を寄せる。
一度目は、余り気にも留めていなかったけれど。
どうも最近、お店での松之助の表情が、暗い気がして。
どうにも、気になってきて、佐助はそっと、布団から抜け出した。
「松之助さん?」
そうっと、木戸を潜り抜けようとする背に呼びかければ、過剰なほどにびくりと、その背が跳ねる。
「あ、…佐助さん」
驚いて取り落としたらしい、紙入れを拾い上げれば、それは随分と重い。
「こんな時間に、何処に行くんです」
「あ、…は、腹が減って…」
言う、その視線は泳いでいて。
佐助は一層、怪訝そうに眉根を寄せた。
「蕎麦を手繰るには、こいつは随分と多すぎやしませんか?」
下手すぎる嘘に、柔い声音で苦笑すれば、困りきったように眉尻を下げて、見上げてくる眼と、視線が合った。
どうにも、訳ありらしいと感じて。
そっと、その手を引いて、近くの庭石に座らせる。
「一体何があったんです」
問いかけても、松之助は俯くばかりで。
何か困ったことになっているのは、確かなはずなのに。
決して、自分から口を開こうとはせぬ、その頑なな姿勢に、己の主の姿が、重なる。
「全く…似なくてもいいところまで似ているのだから」
困ったように呟けば、松之助がきょとんと、目を見開くから。
苦笑いで、「頑固なところが、若だんなとそっくりだ」といえば、初めて、その顔に笑みが浮かんだ。
「最近の松之助さんは元気が無い。…若だんなも心配しますよ?」
「………。実は……」
松之助は何度か逡巡する素振りを見せたけれど。
大事な一太郎の名に、躊躇いがちに、口を開く。
最初は、手持ちの金を渡した。
弟は、それでは足りぬといった。これっぽっちではとても、足りぬと。
店が焼け建て直し、借金が自分達を苦しめているのだと。
その上、戸惑う松之助に、「なら長崎屋の旦那様に直接頼んでみるよ。…実の子の弟だもの。きっと良くして下さるに違いないよねぇ?」と、笑ったのだ。
それだけは。長崎屋に迷惑を掛けることだけは、避けねばならないから。
長崎屋に来てから今日までこつこつと貯めていた金子を渡そうと。
誰にも気づかれぬよう、夜半、抜け出そうとしていたのだ。
「そうでしたか…。弟さんを思いやるのはお優しいことですがね。…それが弟さんのためにならないのは、松之助さんだって分かるでしょう?」
柔く、諭すように言えば、こくりと一つ、首が縦に揺れる。
俯いた顔は、今にも泣き出してしまいそうで。
佐助はそっと、その手を擦ってやりながら。
松之助からの、言葉を待つ。
「分かって…いました。…けど、自分だけ助かって…あたしは、此処でこんなにも良くして貰っているのに…林太郎のことを…弟のことを、気にも掛けてやれなかった…」
だから、負い目を感じて。
つい、金を渡してしまったと、松之助は言う。
弟と言っても、殆どかかわりの無い縁の薄い存在のはずなのに。
なんとも松之助らしいと、内心で苦笑しながら。
これからどうするか問えば、とりあえず今日は、林太郎が待っているから行くと言う。
金子は渡さず、分かってくれるまで話をすると。
それが良いと、佐助が笑った時。
「佐助…?兄さんもいるの?」
不意に、響いた声に、びくり、松之助の肩が跳ねた。
最も、知られたくない人に声を掛けられて、きゅっと、膝の上で握り締めた手が、緊張に強張る。
「若だんな。どうしたんですこんな刻限に」
「どうしたって…私は厠に行くところだよ。…兄さん?出かけるの?」
「あ…その…」
怪訝そうに小首を傾げる一太郎に見上げられて。
松之助の視線が、揺れる。
「どうしたの。何があったの」
その、瞳にいつもと違う気配を察したのか。
松之助を覗きこむ目は、逃げることを許さなくて。
困りきったように、眉尻を下げる松之助に見上げられて、佐助は小さく、苦笑を漏らす。
「松之助さん、観念するしかないんじゃあないですか?」
「そんな…」
「…どういうこと?」
小首を傾げる一太郎に、戸惑う松之助を他所に、佐助が全てを話してしまう。
そうして、全てを聞いた一太郎は、己も行くと言い出した。
「だ、駄目です。夜も遅いし、お体に触ります」
「そうですよ若だんな。ちゃんと寝て無くては駄目です熱がでますよ寝込みますよ」
佐助も窘める様な視線を投げて、寝間へ戻るよう、その薄い肩に手を掛ける。
けれど、一太郎は頑として動こうとはしない。
パシリ、佐助の手を払い除けると、強い眼で松之助を見上げて、言った。
「兄さん一人じゃあ心配だもの。…どうしても私を置いていくというのなら、私は兄さんが心配で心配で、きっと朝には熱を出しているだろうさ」
その声音は、どこか怒っている風で。
決して、譲る気配を見せない挙句、熱を出すといわれては、頼りの佐助も困り顔で空を睨みつけるしかない。
「仕方ない…。帰ったらすぐに寝るんですよ?」
「佐助さんっ?」
何を言い出すのだと、目を見開く松之助に、佐助が、困ったように笑う。
「仕方ないでしょう。あたしも付いていきます」
己一人で、誰にも迷惑を掛けぬように、事を片付けるつもりだったのに。
随分と大掛かりな話になってしまったと、松之助は一人、戸惑うように眉根を寄せた。
「松之助さん、いつもご苦労様」
何気なく、耳に入ってきた名前に、ふと、足を止める。
視線をやれば、荷運びか何かの帰りだろうか。
若い手代を、店の番頭らしき男が、店先まで見送りに来ていたところだった。
「いえ…こちらこそ、いつもありがとうございます」
控えめに笑いながら、しっかりと返すその横顔に、目を凝らす。
手代は、随分と上等な着物を着ていた。
大店に、勤めているのは一目で知れる。
話でしか知らぬ兄の、生みの父親が営んでいる店のような、大店の手代に違いない。
「いえいえ。長崎屋さんには本当に、いつもお世話になって…」
番頭が、何気なく口にした屋号に、目を見開く。
どくり、血がざわつくような心地がして。
思い浮かぶのは、一つの予感。
そう言えば、あの火事で兄の奉公先も燃えてしまったのだ。
兄が生まれた時に、既に縁が切れていたとはいえ。
生みの親を頼っていたって、不思議は無い。
「松之助、…兄ちゃん?」
番頭に暇を告げて、歩き出したその背に、恐る恐る、呼びかける。
振り返った顔は、怪訝そうな色を浮かべていたけれど。
それでも、本郷の、今は焼けてしまった己の生家の屋号を告げると、その眼は驚いた様に見開かれた。
「林太郎…お前…無事だったのかい」
「ああ。…兄ちゃんも、元気そうだね」
零れるように、己の名をつぶやく兄に、林太郎は、ぎこちない笑みを向ける。
「今は…長崎屋に?」
「え、…?ああ、うん。…廻船問屋の方で、手代を…」
戸惑うように、自分を見つめる兄の身なりは、自分よりもずっと立派なものだった。
家が焼け、店が焼け。
一時は明日をも知れぬ身の上になり、ようやっと、店を建て直しても、今度はそこに、借金と言う重荷が覆いかぶさってきた。
大した蓄えも無い店を立て直せば、借金が嵩むのは当然だ。
林太郎の、日々の暮らしは、決して楽なものではない。
人より随分荒れた手が、何よりそれを、あらわしていた。
「俺達のこと、気に掛けようとは思わなかったの」
「え?」
小さく、呟いた声は、町の雑踏に紛れて、松之助には届かない。
じわり、じわり、身のうちを底意地の悪い感情が焦がす。
ぎりと、荒れた手を握り締めて。
顔を上げて、浮かべるのは、意地の悪い笑み。
「俺たち、火事で家が焼けたでしょう?」
「ああ、うん。…大変だったろう」
眉根を寄せて、弟を見つめる松之助は、心底心配していたけれど。
歪んだ心持になってしまった林太郎には、ひどくよそよそしく、まるで他人事扱いのように、聞こえた。
それは一層、身のうちの黒い感情を増幅さて。
知っていて、助けの手を伸ばしてはくれなかったのかと、苛立つ。
「それでね。今、暮らし向きに酷く困っているんだよ」
眉尻を下げて。
悲壮な声音で喋る自分を、内心、大した役者だと、せせら笑う。
「兄ちゃん、長崎屋に勤めてるなら、随分貰っているんだろう?」
覗きこんだ兄の眼が、揺れる。
きっと、実の父に泣き付いて、良い待遇を受けているに違いないと、松之助のことを、何も知らない林太郎は、思い込む。
こんなにも、こんなにも、己は辛い思いをしているのに。
荒れて、ひび割れた手が、痛んだ。
「少しでいいんだ。……金子、都合しておくれよ」
うっすらと笑みを浮かべて。
覗きこんだ松之助の顔は、強張っていたけれど。
その首を、横に振ることは、しなかった。
守「犬神殿犬神殿」
佐「何ですか?」
守「陰毛をくれませんか」
佐「…………は?」
守「………ちょっと危ないですよ白沢殿。貴方の爪が私の喉に刺さりそうです」
仁「刺そうとしてるんだから当たり前だよこの変態狐」
守「失礼な。貴方にだけは絶対に言われたくないですよ。…誤解しないで下さいよ即物脳さん。大体私は屏風以外興味ないです」
仁「だったらなんで佐助の陰毛がいるんだい。確かにこいつのは上等だが」
佐「五月蝿い馬鹿!」
守「私の兄弟子に仔が生まれるんですよ。安産の御守りにと思って」
仁「ああ万治郎殿か。けど佐助のは駄目だよあたしのだ」
佐「お前は黙ってろ!……守狐殿…確かに犬は安産ですが…あたしは仔を産みませんよ。第一犬じゃなくて犬神です」
仁「そうだよまだ仕込んでもないのに」
佐「だから黙ってろと言ってるだろう!」
仁「何だいお前が毛無しになったら困ると思ってせっかく…」
佐「だ ま れ」
守「………もう良いですよ余所をあたります」
陰毛御守りの話を聞いてふと思った。
佐助さんの陰毛なら欲しい(変態)
苛々する。
心底、そう思いながら、目の前に置かれた、普段なら絶対に自分からは入らないであろう、喫茶店の、グラスに入れられた量が少ないくせに、値段だけは高いコーラを、啜る。
大きな氷が、ストローに突かれ、からんと、涼しげな音を立てた。
「でね、水野ったらムキになっちゃって…本当に可愛い人だよ彼は」
「ああそうですか」
慣れたはずの東の言葉が、こんなにも神経を逆撫でするなんて。
関西に帰った所為だろうかと、無理矢理、思考を逃がしてみたりする。
「なんだか、水野と居る時より、機嫌が悪いね藤村」
「……気のせいじゃないんですか」
かじり、行儀悪くストローを齧りながら。
単調に返すシゲは、内心、辟易と溜息を吐く。
東京選抜の、郭英士。
嫌いだと、思う。
「妬ましい?」
「は?」
唐突な問いかけに、顔を上げれば、にやりと、口角を吊り上げる顔がそこにあって。
思わず、眉根を寄せる。
「だって、今俺は、藤村より近くに、水野の傍にいるもの」
その言葉に、ぎりと、拳を握り締める。
嫌いだ、と思う。
偶然、街中で出会って。
「やあ」何て、親しげな笑みと共に、声を掛けてきたのは、郭からだった。
「暇だから、少し話そう」なんて誘われて。
そこに水野の名前さえ、出てこなければ、簡単に断ることが出来たのに。
むしろ、水野の名前を出すことが、目的だったんだと、今更思う。
「そう、思とったらええやん?」
鼻で、嘲笑って。
左の口角だけで、笑みを作る。
「ええこと、教えたろか」
「へぇ?何?」
ついと、指先でコーラのグラスを押しやって。
身を乗り出し、郭の白い耳に、唇を寄せる。
「タツボンってキスするとき、めっちゃギュって、目ぇ瞑るねんで」
郭の目が、見開かれるのが、気配で分かる。
満足げな笑みを、唇に刻んで。
「コーラ、ごちそうさん」
そのまま、席を立つと、出口へと、向かう。
「藤村」
呼び止められ、振り返る。
もう、あの気に食わない笑みは、そこには無かった。
「貰うから。必ず」
「…やらへんよ」
薄く笑みを浮かべて。
カラン、ドアベルを鳴らして、外に出る。
生ぬるい春の風が、頬を撫でた。
―――――――
せっかくネット環境のある自宅に帰ってきたというのにメモリを忘れたと言う悲劇^p^
仕方が無いので拍手だけ変えますー。
仁屏が一個だけ。